初めての株式投資

第56回米国市場との関係について

前回の当欄では2回に分けて「調査機関の投資判断」について解説するなど、主に個別銘柄の株価変動要因を紹介してきましたが、今回からは株式市場全体に影響を及ぼす変動要因を解説していきたいと思います。

まずは「米国市場の結果」から紹介しましょう。

寄り付き前に配信される市況関連ニュースには、必ずと言っていいほど、米国市場の結果が掲載されているのではないでしょうか。

米国市場といえば、株式時価総額世界一のニューヨーク証券取引所や世界最大の新興市場のナスダック証券取引所を擁する世界最大の証券市場です。東証・大証上場企業にも重複上場(米国預託証券・ADR)を果たしており、その取引結果が東証や大証の価格形成に大きな影響を与えます。

ここは、基本に立ち返って「なぜ、米国市場の結果が変動要因になるのか?」をまとめてみたいと思います。

世界最大の証券市場となる米国市場には、世界の投資マネーが集中しています。そのマネーが「リスク選好」となればリスク資産となる株式購入が進み、株価は上昇しますし、一方で「リスク退避」となれば、リスク資産の株式価値は低下することとなります。

また、米国経済と日本経済はかつて「米国が『くしゃみ』をすると日本が風邪ひく」と言われたほど、日本の根幹産業となる輸出企業は世界トップクラスの市場規模を持つ米国市場に依存。米国経済を反映した株価の上下によって、日本企業の収益にも影響を与える、との認識も強いようです。

注意すべきは「為替相場も含めて確認しなければならない」ということです。昨年後半からの金融緩和によって、リスク選好=ドル下落の傾向につながっており、リスク選好によって株式購入も進みますが、一方でドル下落とともに円が上昇。日本経済や日本株にとってのマイナス要因となる「円高」を招きかねません。

寄り付き前の市況確認では、米国市場の結果とともに、為替水準も見ておきたいところです。

次回は「シカゴ日経平均先物」について詳しく解説します。お楽しみに!

第57回シカゴ日経平均先物について

前回は株式市場全体に影響を及ぼす変動要因として「米国市場との関係」について紹介しましたが、今回も米国市場の結果を反映する「シカゴ日経平均先物」について解説したいと思います。

現在、日経平均先物取引は、国内で大証こと大阪証券取引所を中心に売買が行われていますが、海外でもシンガポール取引所(SGX)、シカゴマーカンタイル取引所(CME)で売買が行われています。

大証でもイブニングセッション(夕場)での取引が行われるなど、先物の取引時間は延長する傾向が強まっています。シンガポールとの時差は1時間ですが、シカゴとの時差は約15時間。シカゴ市場では日本時間の深夜から取引が行われるわけです。

当然、日経平均株価は日本の株価指数ですから、その先物取引となる日経平均先物も大証の価格形成が主導権を握っています。ただ、前回も「米国市場との関係」で紹介した通り、米国は世界最大の証券市場です。同時時間帯に取引される株式時価総額世界一のニューヨーク証券取引所や世界最大の新興市場のナスダック証券取引所での価格推移の影響を受けることは言うまでもありません。

寄り付き前の市況ニュースでは、米国株価指数の結果とともに「シカゴ先物終値は大証終値比●円の上昇(下落)でした」などと報じらるのを目にした方も多いと思います。

寄り付き前では、シカゴ先物終値と同水準で大証の取引を開始することが多く、シカゴの先物取引の結果が大証の寄り付き注文に影響を与え、先物取引の推移が原資産でもある日経平均株価に影響を与えるため、「株式市場全体に影響を及ぼす変動要因」として欠かせない情報のひとつでしょう。

寄り付き前には、米国株価指数とシカゴ先物終値の結果を注意して見ておきたいところです。

次回は「外資系証券の注文動向」について詳しく解説します。お楽しみに!

第58回外資系証券の注文動向について

前回は米国市場の結果を反映した「シカゴ日経平均先物」について紹介しましたが、今回では「外資系証券の注文動向」について解説したいと思います。

寄り付き前の市況ニュースで、米国市場やシカゴ日経平均先物の結果とともに「外資系証券の注文動向」というのを一度は目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

通称は「外資系動向」とも呼ばれますが、通常は「売り●万株、買い●万株で、差し引き●万株の買い越し(売り越し)」といった表記でニュース配信されるのが一般的です。

東京証券取引所における外国人投資家の売買シェアはおよそ6割前後と言われ、相場全体に多大な影響を与えています。国内証券との取引もありますが、多くは外資系証券を用いているとされ、外資系証券経由の注文動向は外国人投資家の取引姿勢を反映したものとも判断できるでしょう。

国内企業が株式の「持ち合い解消」を進めた1990年代後半から、2000年代前半では外資系動向が「相場の方向性を左右する指標」として重要視されていました。

ただ、ヒアリング調査をまとめた観測数値であることや「株数ベース」で、値嵩株とホールディングス化による資本再編で大型株の単元株設定もまちまちとなり、徐々に影響力を失っているのが現状です。

有効性を発揮するのが、海外祝日休場や年末年始、夏期休暇など「外国人不在が予想される状況」です。ただ、この場合は「買い越しや売り越しの株数」にまったく意味はなく、単純に「買いと売りの株数の増減」が指標となります。

株数全体が急減していれば「外国人不在」と判断できますし、株数全体に変化がなければ「外国人参戦」とも読み取れます。全体相場の方向性や物色対象の変化に影響を及ぼすため、「外国人不在が予想される状況」では未だに見逃せない指標となるでしょう。

次回は「米国預託証券(ADR)」について解説します。お楽しみに!

第59回米国預託証券(ADR)について

前回は、寄り付き前に確認できる情報として「外資系証券の注文動向」について紹介しましたが、今回は「米国預託証券(ADR)」について解説したいと思います。

今回取り上げる「米国預託証券(ADR)」も前回まで紹介した「米国市場の結果」「シカゴ日経平均先物」「外資系証券の注文動向」などと同じく、寄り
付き前に確認できる市況ニュースの一つです。

「米国預託証券」という名称やADRの略称「American Depositary Receipt」から「米国市場で預託され、取引される証券」だというのは感じが掴めますが、定義としては「外国法人が発行する有価証券に対する所有権の米ドル建て記名式譲渡可能預り証書」という捉え方ができます。

要するに日本やドイツ、中国やインドなど米国外現地市場上場企業の米国市場で外国有価証券のドル建て売買を行える手段として認識していただければ良いと思います。

ドル建ての取引となりますが、米国の取引時間帯で売買が行われるため、当然ながら米国市場の影響を強く受けます。ただ、国内全銘柄の取引が行われているわけではなく、トヨタ<7203>、ソニー<6758>、任天堂<7974>、三菱UFJFG<8306>、野村ホールディングス<8604>など、日本を代表する大企業が対象となっています。

当然ながら、為替の影響以上の株価変動が見られれば、米国市場の数時間後に取引を開始する東京市場の株価にも大きな影響を与えます。株価の確認方法としては、ADR一覧などの市況ニュースを確認する方法や米国の金融ポータルサイトなどでも見ることができます。

注意すべき点としては、株価の確認方法が国内で使われる「コード番号」ではなく、米国で一般的なアルファベットを用いる「ティッカーシンボル」で行われることです。トヨタはトヨタモーターを示す<TM>、ソニーが<SNE>、任天堂が<NTDOY.PK>、三菱UFJFG<MTU>、野村ホールディングス<NMR>などで、米国の金融ポータルサイトで検索する前には「ティッカーシンボル」を確認しておきましょう。

次回は「為替相場との関係」について解説します。お楽しみに!


第60回為替相場との関係について

前回は、寄り付き前に確認できる情報として「米国預託証券(ADR)」について解説しましたが、今回は「為替相場との関係」について紹介したいと思い
ます。

前回まで「米国市場の結果」「シカゴ日経平均先物」「外資系証券の注文動向」「米国預託証券(ADR)」と寄り付き前に確認できる市況ニュースを取り上げてきましたが、今回紹介する「為替相場」も前営業日との比較で株式相場に影響を与える株価変動要因の一つです。

日本の根幹産業は輸出産業が担っていますし、為替が円安に振れれば貿易収支が増え、反対に円高に振れれば収益圧迫要因となります。とくに日経平均株価を構成する銘柄の多くは輸出企業が揃っていますし、円安が株価指数上昇の強い追い風となるでしょう。

ただ、インターバンク間で24時間取引が行われる為替相場については、寄り付き後も為替相場の変動が見込まれるため、取引時間中の相場の方向性も握っています。

とくに「今週の気になる株式キーワード」でも取り上げたことのある【仲値決済:なかねけっさい】が見逃せません。銀行など金融機関が東京市場では9時55分ごろのレートを参考に、個人との顧客取引や外国為替取引をする際の基準レートとして用いる外国為替レート「仲値」を決めることから、「仲値決済」を境に為替相場のターニングポイントになることが多いようです。

ただ、あまり為替相場を深く掘り下げると、世界中で取引される各通貨間の金利差や経済環境、投機筋動向の把握などが必要となり、株式相場のほかにも取得する情報が膨大となります。方向性の判断なども難しく、株式相場を中心に臨むうえでは、あまり「動きに捉われ過ぎない」ことも重要でしょう。

次回は「中国市場との関係」について解説します。お楽しみに!

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