初めての株式投資

第131回信用取引を用いたつなぎ売りについて

前回は「信用取引の決済手段」について紹介しましたが、今回も「信用取引の決済手段」を応用した「つなぎ売り」について解説したいと思います。

前回紹介の「信用取引の決済手段」にて、現物株式を保有しながら、あえて信用売りを行う売買戦略に「つなぎ売り」という投資戦略があることを紹介しましたが、今回はこの「つなぎ売り」を解説します。

つなぎ売りとは、保有している「現物株」を売らず、同じ銘柄を「信用取引で空売り」することを指します。「あえて」と前置きしたのは、現物株式を保有しながらも同銘柄の下落を見込んだ信用売りを行うのは、現物株式を一旦手放した方が効率的であるとの見方に変わりはないからです。

それでも「つなぎ売り」を活用する意味としては、中長期視点では現物株の保有を続けたいが、短期的には下落が見込まれる場合。または全体相場の調整時、連動して下げる「連れ安」を見込んで下落分をヘッジする狙いがあります。

空売りのポジションが短期の下落分を補えることから、バイホールドを目的とした長期投資でも信用取引を活用するメリットは大きいと言えます。第123回「損失繰越控除・還付を活用した長期投資について」でも解説したように、長期投資といえども現物株式を買ったまま放っておくのは賢明ではないでしょう。

もちろん、長期保有で配当金を得たとしても、第129回「信用取引と配当について」で解説したように配当調整金で調整が図られることから、それほど意味はありませんが、現物株式を保有していれば「株主優待の権利」は得られます。

この株主優待の取得を目的した売買戦略も個人投資家独自の投資法といえ、次回はこの「信用取引を活用した株主優待取得」について解説します。お楽しみに!

第132回信用取引を活用した株主優待取得について

前回は「信用取引を用いたつなぎ売り」について紹介しましたが、今回は応用編となる「信用取引を活用した株主優待取得」について解説したいと思います。

前回紹介の「つなぎ売り」は、現物株式を保有しながら、あえて信用売りを行い、株価の下落ヘッジを目的とすれば有効な売買戦略であることを紹介。さらに期末の配当や優待の権利取得に関して、第129回「信用取引と配当について」でも解説したように、配当は調整金で調整が図られるものの、現物株式を保有していれば「株主優待の権利」は得られることを紹介していました。

今回紹介する「信用取引を活用した株主優待取得」は前回の「つなぎ売り」を応用した売買戦略となります。むしろ「リスク限定の投資手法」と言って良いかもしれません。

現物株式の保有と信用売りの「つなぎ売り」の状態で権利落ち日を迎えた場合、多くのケースでは配当権利落ち分の株価下落が見込まれます。この株価下落分のリスクは売りと買いの「両建て状態」で限定でき、前述の通りに配当分は買いと売りでほぼ相殺されることから、現物保有の株主優待分がそのまま取得(利益分)することができます。

企業によっては、魅力的な株主優待を配しているケースもあり、株主優待取得のみを目的とする売買でもメリットは大きいのではないでしょうか。また、現金化できる株主優待もありますし、巷では有効な投資手法として確立されています。

ただし、注意すべき点は、現物保有と信用売りを発注するため、一定の資金量を要すること。そして新規注文から決済で現物、信用と4回分の手数料が発生するコストが挙げられます。この手数料コストに見合った魅力的な株主優待でなければ、そのまま手数料分が損失となるでしょう。

さらに、貸借取引の信用売りを手がける際に発生する「逆日歩」。そして一般信用取引の信用売りを手がける際に注意したい「取引証券会社の売り数量の上限」も大きなハードルとなります。人気の株主優待企業の逆日歩は権利付き最終日に急上昇しますし、人気の株主優待企業の一般信用も売り数量上限に達する確率が非常に高く、信用取引を活用した「株主優待取得」にもリスクがあることを認識しておきましょう。

やはり株主優待は、企業が個人株主への株主還元姿勢や安定株主拡大を意図したものですし、言わば「おまけ」のようなもの。この「おまけ」を逆手に取った投資手法を軸とするよりも、素直に株式価値向上が見込まれる投資対象を見つけることに労力を割いたほうが有効ではないでしょうか。

次回は「信用取引の委託保証金」について解説します。お楽しみに!

第133回信用取引の委託保証金について

前回は「信用取引を活用した株主優待取得」について紹介しましたが、今回は「信用取引の委託保証金」について解説したいと思います。

さて、信用取引を行う際には、証券会社から株式購入代金や株式を借りて注文を行うことから、委託保証金と呼ばれる「担保」が必要となることを紹介していました。では、その委託保証金はどの程度必要なのでしょうか?

実は、法令によって、委託保証金の最低額は「30万円」と決められています。要するに「30万円以上の投資資金」がなければ、信用取引を活用することができません。もちろん、実際の最低委託保証金は証券会社によって異なる場合もあり、各証券会社の最低委託保証金ルールを確認してみてください。

ただ、この委託保証金には現金以外にも株式や国債などの有価証券を充てることもできます。これを「代用有価証券」と呼び、現金担保の代わりとなるわけです。

ただ、代用有価証券には一定の価値があるものの、現金化するに当たっては額面通りの金額の価値から低下するケースが一般的でしょう。当該証券類の時価に一定の掛け率(80%前後)を乗じた価値で担保化され、株式では上場区分によって掛け率が変わってくる場合もあります。

したがって、現物株式を保有していれば、その株式を担保として信用取引を手掛けることができるわけです。過去に現物株を購入し、含み損発生後に「塩漬け状態」となっている株式を有効活用できます。

ただ、信用取引にも投資損失は付きものですし、信用取引によって資金不足によって起こるリスクを勘案すると、やはり法令通りに最低でも30万円以上の投資資金は用意しておきましょう。

次回は「信用取引の委託保証金維持率」について解説します。お楽しみに!

第134回信用取引の委託保証金維持率について

前回は「信用取引の委託保証金」について紹介しましたが、今回は「信用取引の委託保証金」に関係する「維持率」について解説したいと思います。

信用取引を行う際に不可欠な「委託保証金」ですが、もちろん委託保証金を差し入れたからといって無制限に信用取引を行えるわけではありません。信用建玉の上限に関しては、今回紹介する「委託保証金維持率」が重要な意味を持っています。

この「委託保証金維持率」は、信用建て玉金額に対する委託保証金の割合を指します。委託保証金維持率が100%ということは、差し入れた委託保証金とほぼ同額の信用建て玉を有していると認識できるのではないでしょうか。

100%以上ということは委託保証金を下回る建玉保有、100%以下ならば委託保証金を上回る建玉を保有していることになります。もちろん、信用建玉に含み損が生じれば委託保証金が損なわれる可能性があることから、割合算出における分母の建玉総額はそのままながら、分子の委託保証金の低下とともに維持率も低下していくこととなります。

100%を大きく上回る委託保証金維持率では、信用取引のメリットでもあるレバレッジを活用しているとは言えませんし、レバレッジを効かせての100%以下の維持率でも損失可能性を考慮すればやや過大な取引リスクを負っていることになります。維持率が概ね100%前後で推移していれば、適正水準と言えるでしょう。常に取引証券会社で表示される委託保証金維持率を確認しておきたいところ。

そして、過大な取引リスク、取引損失を制限する目的で、委託保証金最低維持率が法令で20%と定められているほか、証券会社の取引ルールでも30%など20%以上の委託保証金最低維持率を設けていることもあり、この最低保証金維持率を切ると、証券会社に追加で保証金を追加で収める必要があります。

これは「信用取引の追加保証金」と呼ばれ、証券会社に追加で入金する必要があるため、非常に重要になってきます。そこで次回は「信用取引の追加保証金」について解説します。お楽しみに!

第135回信用取引の追加保証金について

前回は「信用取引の委託保証金維持率」について紹介しましたが、今回も「信用取引の委託保証金」に関係する「追加保証金」について解説したいと思います。

信用取引を行う際に不可欠な「委託保証金」ですが、前回紹介した「委託保証金維持率」が低下し、最低保証金維持率20%を切ると、証券会社に追加で保証金を追加で収める必要があることをお伝えしました。

この「追加保証金」は、一般的に「追証(おいしょう)」と呼ばれるもので、最低保証金維持率20%の回復を目的とした追加資金入金が証券会社より求められます。

実際には、最低保証金維持率20%を割り込んだ日か翌日に、割り込んだ日から翌々日の正午までに20%を回復する入金が証券会社から通知されます。もし不足分の保証金を期限までに納められない場合は、投資家の意思とは関係なく反対売買により損失が確定。これは「強制決済」と呼ばれるもので、場合によれば差し入れた証拠金以上の請求が証券会社から求めれる場合もあります。

よく「信用取引は怖い」などと言われますが、この「追証」による証券会社からの通知や強制決済による身の丈を超える損失発生が伝わったことによるものでしょう。ただ、その話の多くは、信用取引の仕組みを理解せずに信用取引を行った方が過大なリスクを取って大損し、この手の話が伝わったのだと思います。

追加保証金発生時は、そのまま取引損失を認めてロスカットを行うか、それとも追加保証金を差し入れるか判断したいところ。もちろん追加保証金発生に至らないレベルでの取引を続けるのが最も大切。信用取引を手掛ける際には、常に保証金維持率に気をつけながら、取引を行いましょう。

次回は「信用取引残高」について解説します。お楽しみに!

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