- 第121回「証券取引の確定申告について・配当課税編」
- 第122回「譲渡損失の繰越控除について」
- 第123回「損失繰越控除・還付を活用した長期投資について」
- 第124回「2012年版 信用取引について」
- 第125回「信用取引の種類について」
- 第1回~第5回
- 第6回~第10回
- 第11回~第15回
- 第16回~第20回
- 第21回~第25回
- 第26回~第30回
- 第31回~第35回
- 第36回~第40回
- 第41回~第45回
- 第46回~第50回
- 第51回~第55回
- 第56回~第60回
第121回証券取引の確定申告について・配当課税編
前回は「証券取引の確定申告」の売却損益について解説しましたが、今回も「証券取引の確定申告」の配当課税について紹介したいと思います。
前回紹介した「証券取引の確定申告」の『売却損益』については、譲渡所得として申告分離課税の対象となることをお伝えしましたが、今回の『配当益』では原則源泉徴収されるため、基本的に確定申告の必要はありません。税率も大口株主や未公開株式等の配当を除けば売買益と同じく10%(所得税7%、住民税3%)で、2013年まで10%の軽減税率となっています。
ただ、平成22年(2010年)から上場株式等の配当金は、特定口座(源泉徴収あり)への受入れが可能となり、特定口座内で譲渡損との損益通算ができるようになりました。この損益通算は年末に行なわれ、超過徴収分が翌年1月初旬に還付されます。
要するに、売買で生じた損失を配当益で穴埋めし、配当受け取り時の源泉徴収分から税還付が受けられるわけですから、配当目的での長期投資においても、含み損の発生している銘柄を一旦仕切って「損出し」しておき、後に還付を受ければ実質的な節税対策ともなります。
配当目的で保有した銘柄でも「含み損」が発生している場合には、節税対策として一旦手仕舞ったうえで、再度購入して購入単価を切り下げながら配当受け取り時には還付を受けるなど、投資収益を把握しながら上手く運用していきたいものです。
次回も「証券取引の確定申告」における「譲渡損失の繰越控除」について解説します。お楽しみに!
第122回譲渡損失の繰越控除について
前回は「証券取引の確定申告」の配当課税について解説しましたが、今回は「譲渡損失の繰越控除」について紹介したいと思います。
前回まで紹介していた「証券取引の確定申告」などにおいて、繰越控除によって還付を受けられる仕組みを取り上げていましたが、今回は「譲渡損失の繰越控除」に絞って、具体的な損失の繰越方法や還付方法などを解説します。
まず、株式投資における「損失の繰越」ですから、年間取引の損益結果で損失を計上した場合に限られます。前回でも紹介しましたが、配当金との損益通算が可能なほか、特定口座には一年の取引結果をまとめた「年間取引報告書」が翌年の確定申告時期に送られてくるため、損益結果もわかりやすいでしょう。
譲渡損失の繰越控除を行うためには、まず確定申告書に繰越控除適用を記載し、「所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」とともに「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の添付が必要となります。
この「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を提出することで、他口座間での損益通算も可能ですし、複数口座での運用時には不可欠な提出書類となるでしょう。
さらに繰越控除、還付請求を行うためには、過年度分の「所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」の提出が必須。ただ、損失発生初年度であれば、損失分を入力するだけで次年度の損益通算が可能となり、損失を繰越できます。
また、損失の繰越は過去3年まで可能。次年度で年間損益で投資収益を計上した場合には、過年度の損失分と損益通算を行い、還付請求が可能となります。ちなみに、損益通算は遠い年度の損失分から、損失が発生した場合には忘れずに「所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」と「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を確定申告時に添付しておきましょう。
文字として紹介すれば、ややわかりにくいかもしれませんが、今では、インターネット上で「確定申告書等作成コーナー」があり、年間取引報告書を用意し、内容を記載しながら入力していけば他口座間での損益通算だけでなく、繰越控除や還付請求なども容易にできます。計算間違いも少なくなりますし、ぜひ「確定申告書等作成コーナー」を利用してみてください。
次回は「譲渡損失の繰越控除・還付」を活用した「長期投資」について解説します。お楽しみに!
第123回損失繰越控除・還付を活用した長期投資について
前回は「証券取引の確定申告」における「譲渡損失の繰越控除」について紹介しましたが、今回は「譲渡損失の繰越控除」を活用した「長期投資テクニック」について解説したいと思います。
前回では、年間取引の損益結果で損失を計上した場合における「譲渡損失の繰越控除」や還付の方法を解説しましたが、この繰越控除や還付を上手く利用すれば、投資収益や配当で発生した税金を節約できる「節税効果」も期待でき、長期投資を行う大きなメリットともなります。
長期投資といえば、買ったらそのまま長期間の保有を続ける「バイホールド」の印象が強いですが、企業から受け取れる配当金は当然ながら源泉徴収の「配当所得課税」の対象となりますし、買って保有したままでは「配当所得課税」分の税金を常に支払っていることとなります。
配当金で得た配当所得に対し、含み損が発生している銘柄があれば、一旦損切り(売却)して買い直す(再購入)「損出し」を行えば、配当所得と譲渡損失の損益通算を行え、損失分が超過すれば税還付を受け取れます。
損益通算の結果、手元に入る配当金がなくなることで、受け取り分は少なく感じますが、含み損が発生していた銘柄の買い単価を低く抑えられることで、次年度には「損出し」した銘柄には含み益発生の可能性が高まります。
また、損失分は次年度の繰越控除の対象となりますし、配当所得との損益通算も可能になりますし、含み損が発生していた銘柄の投資収益を得るチャンスも大きく広がることで、実質的な受け取り分はイーブンと考えて良いでしょう。この配当金の税還付を繰り返せば、節税効果は極めて高いのではないでしょうか。
「長期投資運用」を取り組んでいる方も多いですが、株式購入後に下落し、保有銘柄は「塩漬け」のまま配当課税を支払い続けるケースなど、意外と損益通算に疎い方も多く見られます。ぜひ配当金の税還付を活用して、塩漬け銘柄の購入単価低減にも取り組んでみてはいかがでしょう。
次回は「信用取引」について改めて解説します。お楽しみに!
第124回2012年版 信用取引について
前回は「譲渡損失の繰越控除」を活用した「長期投資テクニック」について解説しましたが、今回は「信用取引」について紹介したいと思います。
「信用取引」については『いまから始める株投資、基本の基本』の第5回でも紹介していましたが、前回からおよそ2年半を経過しており、改めて解説することとします。
前回の紹介時にも、信用取引については「証券会社からお金や株券を借りて売買する取引」として簡略していましたが、委託保証金や現物株を証券会社に担保として委託し、買付資金や売付証券を借りて売買を行える「手元の資金より大きな金額での売買」が可能となるのがメリットでしょう。
もちろん、信用取引を行うためには、信用取引口座が必要となります。ただ、第119回の「2012年版 証券口座の種類について」でも紹介したように、信用取引や先物、FXなどレバレッジ商品とのサービス併用が拡大、証券総合口座のメリットでもあった「MRF」の存在感は薄れてきており、投資経験を積んだ方なら新規口座開設時に併せて信用取引口座を開設する機会も増えているのではないでしょうか。
信用取引は「手元の資金より大きな金額での売買」が可能となることで投資効率を高めることができるほか、現物取引と同様に株式を購入する「信用買い」だけでなく、保有株がなくても売りから取引を行える「信用売り」も可能。株価下落局面でも利益機会となることから、取引の幅を広げることができます。
ただ、信用取引の仕組みは複雑で、用語も難解なものが多いことから、取引を敬遠されている方が多いのも事実。さらに信用取引で過大なリスクを取って損失を被った「失敗例」なども取り上げられることが多く、信用取引に対する印象を「怖い」と認識されている方もいます。そこで、次回以降は信用取引の解説を進めていきたいと思います。
次回は「信用取引の種類」について解説します。お楽しみに!
第125回信用取引の種類について
前回は「2012年版 信用取引について」について解説しましたが、今回も「信用取引の種類」について紹介したいと思います。
個人投資家が「信用取引」を行うためには、信用取引口座が必要となり、さらに口座開設にも審査があることを紹介していました。実は、取引対象となる上場銘柄に関しても信用取引に適した「基準」をクリアする必要があります。
この「基準」を証券取引所が満たしていると判断した銘柄は「制度信用銘柄」として「制度信用取引」の対象となります。一方で、この「基準」を証券会社が満たしていると判断した銘柄は「一般信用取引」として、信用取引の対象となるわけです。
この「制度信用取引」と「一般信用取引」が信用取引における「種類」となり、信用取引を手掛ける際には「制度信用取引」と「一般信用取引」の二通りを選ぶことができます。
信用取引を手掛ける際には、その取引対象が「制度信用取引」や「一般信用取引」の取引基準を満たしているかどうかを事前に確認しておきたいところ。とくに「空売り」が可能となる制度信用取引における「貸借銘柄」や一般信用取引でも「空売り可能銘柄」は限られていますので、証券会社の取引画面や銘柄情報、トレードツールなどでも確認できますから、忘れずにチェックしておきましょう。
次回は「信用取引」の仕組みでもある「制度信用取引」について解説します。お楽しみに!