- 第66回「債券市場との関係について・前編」
- 第67回「債券市場との関係について・後編」
- 第68回「経済指標との関係について」
- 第69回「GDP(国内総生産)について・前編」
- 第70回「GDP(国内総生産)について・後編」
- 第1回~第5回
- 第6回~第10回
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- 第51回~第55回
- 第56回~第60回
第66回債券市場との関係について・前編
前回は2回に分けて「商品市況との関係」について紹介しましたが、今回では「債券市場との関係」について解説したいと思います。
債券も株式と同様に有価証券として扱われることはご存知の方が多いと思います。ただ、種類や売買の仕組み、株式との関係性までを理解されている方は意外と少ないのではないでしょうか。
債券といっても、発行体が国、地方公共団体や特定の公共投資を担う関係機関の「公共債」、民間では事業会社の「民間債」など様々ですが、資金調達する際に発行される「証書」だということは一致しています。
同じく資金調達手段となる株式との違いは、債券の場合には「償還日」に向けて債券保有者に「償還金を返すことが約束されている」ことでしょう。株式には当然「償還」はありませんし、債券にはさらに、分配金となる「利子(利率)」が発行時から決められています。株式にも「配当金」が決められていますが、金額は業績や株主総会次第で流動的。この元本返済の約束と発行時から設定されている利子発生が最大の特徴と言えるでしょう。
債券市場では、新たに発行される「新発債」が購入される発行市場とでうに発行すみの「既発債」を売買する流通市場があります。これらは株式市場と同じ、現物市場で、国際や転換社債などを売買できる取引所市場、相対売買中心の店頭市場があるほか、株式同様に債券にも「先物市場」の存在があります。
次回も「債券市場との関係」についてより詳しく解説します。お楽しみに!
第67回債券市場との関係について・後編
前回は「債券市場との関係」について紹介しましたが、今回も「債券市場との関係」についてより詳しく解説したいと思います。
さて、前回では債券と株式との違いや債券の特質などを中心に取り上げました。債券にも売買市場が存在し、株式同様に日々商いが発生しています。
ただ、債券の価格は株式とは違って権利売買ですし、返済約束や予め利子の決められた債券価格の変動には違和感がある方も多いのではないでしょうか。ただ、債券価値の変動要因となるのが、決められた利子の「利回り」と日々変動する「金利」との差で需給要因が発生します。
市中金利低下で利回り妙味に着目した「債券買い」に、金利上昇で利回り妙味が薄れ「債券売り」につながります。ただ、債券の償還額は決められていますし、需給によって利回りが変化。債券価値上昇で利回りが低下、債券価値下落で利回りが上昇することとなり、利回りの変化で価値の変動を判断します。
しかしながら、債券価格の変動は株式ほど大きくなく、低金利が常態化した日本にとっては、安定資産としての債券、リスク資産の株式として位置付けられている状況。投資マネーがこの間を行き来しています。
そして、最大市場の「日本国債」の影響力は大きく、リスク退避の流れとなれば「債券買い(利回り低下)」で「株式下落」、リスク選好となれば「債券売
り(利回り低下)」で「株式上昇」となり、逆相関の関係が確認されています。
債券市場にも「先物取引」の存在を紹介していましたが、株式同様に市場関係者の思惑が交錯するのは「先物取引」の内容です。株式市場を取り扱う「東証」で国債先物(JGB)が行われていますが、取引時間も株式と同時間帯となり、その価格推移が株式市場にも影響を及ぼします。
次回は「経済指標との関係」について解説します。お楽しみに!
第68回経済指標との関係について
直近2回にわたって「債券市場との関係」について紹介しましたが、今回では「経済指標との関係」について解説したいと思います。
さて、前回まで株価変動要因となる「他市場」の動きを中心に紹介してきました。今回紹介する経済指標は、その名の通りに公的機関や民間調査機関の発表する経済動向を示した「具体的数値」です。
代表的なものは、経済生産性や成長率を示す「GDP(国内総生産)」や日銀短観、景況指標、物価指標、貿易収支などが挙げられます。日本だけではなく、経済関係性の深い米国、欧州、中国ら各国でも経済指標が発表されており、各国の経済状況や将来予想の客観的指標として重要視されています。
もちろん、発表される指標内容によって影響は様々ですが、発表タイミングに向けて内容が観測される「市場予想」と結果との乖離が発表後の反応として現れることが多くなっています。これは「個別銘柄の決算」に近い感覚でしょうか。
企業決算と同じく、事前の期待感が高ければ、その期待感を上回る内容でなければ、発表後の「出尽くし」の影響が見られます。半面、事前の期待感が低ければ、指標発表が「イベント通過」で見直しが進むケースもあるでしょう。
次回以降は、経済指標の種類や傾向などについて紹介を進めます。次回は「GDP(国内総生産)」について解説。お楽しみに!
第69回GDP(国内総生産)について・前編
前回では「経済指標との関係」について紹介しましたが、今回では経済指標の一つでもある「GDP(国内総生産)」について解説したいと思います。
前回から株価材料となり得る要素として取り上げた「経済指標」ですが、今回紹介する「GDP(国内総生産)」は、そのなかでも最重要指標として認識されています。
GDPは、英訳の「Gross Domestic Product」の頭文字を取ったもので、文字通り「国家の経済生産力」を示します。ただ、中間財の取引は算入されないため、実質的な「付加価値の総額」となるでしょう。
製造業の強い日本は米国に次ぐ第2位の地位を保持していましたが、今年2月に日本の2010年通年のGDPが約5兆4700億ドルとなり、中国が1月に発表した5兆8800億ドルを下回ったことで、国家別世界ランクでは米国、中国に次ぐ3位となりました。
ただ、「国民一人当たりのGDP」では、人口の多い中国は日本の10分の1にすぎず、国家の経済生産力では中国が上回っているものの、生産性では日本がまだ上回っている状況です。
かつては「国内純生産」を示す「GNP」が経済生産力を示す指標となっていましたが、企業の海外進出などで次第に有効性が薄れ、現在ではGDPでの経済力算出が主流です。ただ、GDPも人口やインフレ率などにも感応しやすく、足元の動向を推し計るためには、発表内容をよく確認する必要があります。
次回も「GDP(国内総生産)」について解説。株価との関係などについて紹介します。お楽しみに!
第70回GDP(国内総生産)について・後編
前回では経済指標の一つでもある「GDP(国内総生産)」について紹介しましたが、今回も「GDP(国内総生産)」について詳しく解説したいと思いま
す。
GDPは「国家の経済生産力」を示す数値として有効な指標ですが、足元の動向を推し計るためには、発表内容をよく確認する必要があることを紹介しました。
指標を算出し発表を行うのは、日本においては内閣府が担当。算出期間は企業決算と同じく四半期ベース(1-3月、4-6月、7-9月、10-12月)で、年次は10-12月と同時に発表されます。発表タイミングも企業決算と同じく、集計後の発表までタイムラグがありますが、集計期から1カ月以上を経過することが多いようです。
さて、発表内容には「名目GDP」と「実質GDP」があります。簡単に違いを説明するならば、名目GDPが国内で生産された物、サービスの価値を全て合計した「素」の数値であることに対して、実質GDPは、名目GDPに「物価の変動」を考慮した数値です。経済状況の変化を捉えるならば、実質GDPの推移が判断材料となるでしょう。
さらに、発表数値の変化幅(成長率)が株価変動要因となってきます。やはり経済成長性が高まると、企業収益への期待感も強まることから、成長率の増減が内容を見極める鍵となるでしょう。
この成長率に対して、調査機関などからの予想も事前に出揃います。この市場予想は、足元の経済環境をもとに行われることから、予想前提は事前に織り込まれやすく、発表内容との乖離が短期的な株価反応に影響を及ぼします。
次回は「GDPデフレーター」について解説します。お楽しみに!