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第71回GDPデフレーターについて
前回まで2回にわたって「GDP(国内総生産)」について紹介しましたが、今回ではGDPに関する指標「GDPデフレーター」について解説したいと思います。
GDPによる株価変動要因として、成長率の増減や市場予想と発表内容との乖離が材料視されることを示しましたが、今回紹介する「GDPデフレーター」の重要度は成長率に比して低いものの、経済の「温度」を把握するうえで見逃せない指標です。
GDPデフレーターとは、名目GDPを実質GDPで割って算出されます。名目と実質の違いを前回でも紹介しましたが、インフレ調整を行った実質GDPを「素」のGDPとの比を表すということは、純粋にGDPに対するインフレの程度を示すことができます。
GDPデフレーターがプラスであればインフレ傾向、マイナスであればデフレ傾向となります。インフレには名目GDPを押し上げる働き、デフレには押し
下げる働きがあり、どちらが良い面かとの判断は下せませんが、インフレ傾向ながらの成長減退は経済停滞、デフレ傾向での成長加速は額面以上の強い経済活動が確認できるでしょう。
物価指標には「生産者物価」「消費者物価」「企業物価」などがありますが、GDPデフレーターも金融当局が政策金利動向を探るうえで重要視する指標です。GDPデフレーターが物価変動を織り込まないゼロベースが続けば問題はありませんが、いずれかの方向に振れるならば、物価動向に合わせた政策金利設定を行う必要が生じます。
政策金利設定で金融緩和、金融引き締めが行われれば、市中金利も反応し、株式市場の資金流動性に影響を与えます。まさしく市場の先行きを占う意味でも見逃せません。GDP発表時には、成長率の増減や市場予想と発表内容との乖離に加え、GDPデフレーターも確認しておきましょう。
次回は「日銀短観」について解説します。お楽しみに!
第72回日銀短観について
前回ではGDPに関する指標「GDPデフレーター」について紹介しましたが、今回は「日銀短観」について解説したいと思います。
日本におけるマクロレベルの経済指標では、前回まで紹介したGDPに次いで、今回紹介する「日銀短観」が注目度の面で高いとされています。発表内容は一般報道などでも取り上げられる機会も多く、とくに投資を行っている方なら一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
日銀短観という名称が一般化していますが、実態は日本銀行<8301>が四半期ごとに公表している統計調査を指し、正式名称は「全国企業短期経済観測調査」とされ、日銀短観はその略語です。
統計調査では、総務省の事業所・企業統計調査から、資本金2000万円以上の民間企業21万社から業種・規模別に約1万社を選んで調査。集計は3、6、9、12月に実施され、それぞれの調査翌月に結果を公表しています。
調査では、企業の景況感を示す業況判断指数DI(Diffusion Index)が経営者の心理を表すものとされます。この業況判断指数は「足元の動向」と「先行きの見通し」について、対象企業に「良い」「さほど良くない」「悪い」の三つから選択、「良い」とする企業割合から「悪い」とする企業割合を差し引いて算出するものです。
日本は製造業の占める比率が多いことから、大企業製造業の業況判断指数が市場関係者からの注目度が最も高い指標となります。市場予想との乖離が株価の変動要因となるほか、在庫や雇用環境、売上高、設備投資額などについても調査しており、各指標の影響のあるセクター、個別銘柄の株価変動要因にもなってきます。
発表時期は集計調査翌月に発表されますが、発表時間は寄り付き直前です。発表内容は、足元の動向と先行き、市場予想との乖離に注目しておきましょう。
次回は「月例経済報告」について解説します。お楽しみに!
第73回月例経済報告について
前回では「日銀短観」について解説しましたが、今回は「月例経済報告」を紹介したいと思います。
前回の「日銀短観」は、その名の通り日本銀行<8301>が発表している統計調査ですが、今回取り上げた「月例経済報告」は、政府機関の経済企画庁が毎月発表している景気に関する『統一見解』です。
内閣府がGDPや景気指数など最新の経済指標から原案を作成し、経済財政担当相が関係閣僚会議に提出して説明を行います。政府発表の統計ですから、政府の「公式見解」とも言えるでしょう。
報告では、国内景気の状況を総合的に示す「基調判断」が最も注目されます。発表内容は「持ち直し」や「横ばい」、「弱い動き」など具体的な数値ではなく、抽象的な言葉で表現されます。
ただ、評価が前月からの変化など、景気の方向や水準を示すほか、個人消費、設備投資、生産、雇用情勢といった項目別の判断もあり、その後の経済動向を予測する際の重要な判断材料となっています。
最新の統計をまとめた総合的な「感想」とも表現できますが、遅行性はあるものの、一般の方の景気実感に適した統計とも言えます。短中期的な投資の時間軸よりも中長期視点で取り組む際に、マインドの変化や兆しを汲み取るものとして参考にできるのではないでしょうか。
また、政府筋の見解ですから、今後の政策運営などに影響を及ぼすほか、海外投資家の日本経済に対する評価基準の一つとしても確認しておきたい指標です。発表タイミングとしては、関係閣僚会議が月一回行われますが、公表が不定期なため、新聞報道などで確認しましょう。
次回は「鉱工業指数」について解説します。お楽しみに!
第74回鉱工業指数について
前回は「月例経済報告」について解説しましたが、今回は「鉱工業指数」を紹介します。
今回の「鉱工業指数」も前回の「月例経済報告」と同様に公的機関の経済産業省が集計、発表を行う経済指標です。日本経済は製造業をベースとする貿易立国ですから、製造業が生産する工業製品の動向は経済の状況を見極めるうえで欠かせない物差しとなります。
具体的には、鉱工業製品を生産する国内の事業所における生産、出荷、在庫に係る諸活動、製造工業の設備の稼働状況、各種設備の生産能力の動向、生産の先行き2か月の予測の把握を行うためにまとめた指標です。
鉱工業指数と言っても、各種の情勢把握のために8種類で構成。重要視されているのが、通常で鉱工業生産指数として、鉱工業生産活動の全体的な水準の推移を示す生産指数(付加価値額ウェイト・生産額ウェイト)ではないでしょうか。
指数は、平成17年を100とした季節調済指数の前月比の変化が焦点となることが多いようです。前月から上向けば景況改善と受け止められますし、前月から下向けば景況減速と判断できるでしょう。
また、残る生産者出荷指数、生産者製品在庫指数、生産者製品在庫率指数、稼働率指数、生産能力指数、製造工業生産予測指数などもあり、それぞれの業種別、品目別で算出されていることから、どの業種や品目が好調なのかを見極めることも可能となっています。
さらに、日本だけでなく、米国やユーロ圏、中国などでも発表される指標ですから、各国経済の景況感を示す重要指標として、為替相場や株式相場の影響を与えることから、発表タイミングを予め調べておきましょう。
次回は「景気動向指数」について解説します。お楽しみに!
第75回景気動向指数について
前回は「鉱工業指数」について紹介しましたが、今回も経済指標の一つでもある「景気動向指数」を解説したいと思います。
今回の「景気動向指数」は、その名の通り「景気の動向を計る指数」であることはすぐに理解できるのではないでしょうか。ただ、一口に「景気」と言っても前回の「鉱工業指数」のように具体的な経済活動数値で表すことはできないため、総合的な判断が用いられています。
発表を担うのは内閣府、毎月速報値と改訂値が公表されます。多数の指標変化を合成したディフュージョン・インデックス(DI)と、量的把握のコンポジット・インデックス(CI)の二つの種類がありますが、日銀短観と同様にディフュージョン・インデックス(DI)が重要視されていました。
ただ、海外ではコンポジット・インデックス(CI)を公表値とされることが多く、現在ではコンポジット・インデックス(CI)を公表値に、ディフュー
ジョン・インデックス(DI)は参考資料として用いられることとなっています。
発表内容では、景気動向の先行きを捉えた先行指数、足元の景気動向を捉えた一致指数、景気動向に遅れて動く遅行指数の3種が発表されます。12項目が含まれる先行指数には、先行投資に基づく新規求人数、新設住宅着工床面積、機械受注などが参考に。11項目が含まれる一致指数には、鉱工業生産指数、商業販売額、有効求人倍率など。6項目の遅行指数には、法人税収入、家計消費支出、完全失業率などが織り込まれた内容となっています。
株式市場に対する反応としては「株価は経済の先行指標」とされるように、先行指数が参考とされることが多いようです。多くの経済指標と同様に市場予想との乖離が材料視されます。ただ、新聞報道では足元の景気認識に基づく一致指数が取り上げられることが多く、先行きを睨んだ報道内容を確認しておきたいものです。
次回は「物価指数」について解説します。お楽しみに!