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第76回物価指数について
前回は「景気動向指数」について紹介しましたが、今回も経済指標の一つでもある「物価指数」を解説したいと思います。
今回の「物価指数」も名称通りに「物の価格やサービス価格の変動を計る指数」であることはすぐに理解できるのではないでしょうか。ただ、一口に物やサービスの価格と言っても数限りなく溢れていますし、前回の景気動向指数と同様に基準時点と設け、時系列で総合的な判断を用いるしかありません。
また、物価指数としても消費者、企業、生産者など多様に物の値段が存在することから、一概に物やサービスの価格は決め付けられません。よって消費者物価指数、卸売物価指数、小売物価指数、企業物価指数など経済活動における各段階や地域などに分けられて発表されています。
さて、株式相場との関係ですが、物価上昇(インフレーション)は活発な企業活動とともに確認できることが多く、相対的な貨幣価値の下落につながりますし、物価上昇は株式市場にとっても好影響をもたらすことが多いようです。
とくに日本の株式市場、経済状況としては物価下落(デフレーション)の状況にあり、長らく低迷を余儀なくされた経緯もあることから、基本的に物価上昇はプラスに働くことを覚えておきましょう。
ただ、経済後退と物価上昇が同時進行する「スタグフレーション」に陥る状況ともなれば、株式市場にも悪影響が避けられません。インフレの内容にも注意が必要です。
また、新興国では燃料価格など経済サイクルにおける上流のインフレによって、貨幣価値下落を抑えることを目的とした金融引き締めを行うことも多く、決して物価上昇はプラスの影響だけではないことを覚えておきたいところです。
次回は「失業率」について解説します。お楽しみに!
第77回失業率について
前回は「物価指数」について解説しましたが、今回も経済指標の一つでもある「失業率」を紹介したいと思います。
前回までは「物価」や「景気」など総合的な経済指標を紹介してきましたが、今回紹介する「失業率」は生活に密着した雇用環境に関係する指標でもあり、株式投資を手掛けていない方でも注目している方が多いのではないでしょうか。
この雇用関係の代表的指標とされるのが「失業率」です。言葉から労働者における失業者層の比率を指す指標だと判断できますが、実際に失業状態といっても意欲的に求職している方から完全に職探しを諦めた方、実質引退状態の方まで様々ですし、調査方法によってバラツキが出てしまいます。
国内の完全失業率では、総務省統計局で「労働力調査」を行なっています。実際には全国全世帯から無作為選定で調査票を配布、集計したもので、失業率は事実上の「求職状態」にある方を反映した内容となっています。
海外では、労働関係省庁や民間調査などが独自に集計した雇用指標が存在。失業保険の受給者や給料集計など、調査方法によってバラツキが出てしてしまう失業率の弱点を補う雇用関係指標が発表されています。
失業率との株式相場との関係ですが、一般的に雇用環境が改善すると給与所得総額の上昇とともに消費を喚起、景気改善につながる期待感が高まります。一方、失業率が悪化すると給与所得の減少や社会保障費の増大、治安悪化など負の影響が大きくなり、景気悪化につながりやすく、株式相場にもリスク退避圧力が高まるでしょう。
日本の雇用環境は海外に比べ硬直化しているとされ、国内での指標発表時には、それほど大きな影響力はありませんが、米国経済における「米雇用統計」は重要経済指標として認識されており、米国だけの影響にとどまらず、各国株価や為替相場にも大きな影響を及ぼします。
次回も雇用関係指標である「有効求人倍率」について解説します。お楽しみに!
第78回有効求人倍率について
前回は雇用関係の代表的指標「失業率」について解説しましたが、今回も雇用関係指標の一つでもある「有効求人倍率」を紹介したいと思います。
前回の「失業率」では、労働者における失業者層の比率を指す指標だと判断でき、雇用情勢から足元の経済環境を映す手掛かりであることを紹介しましたが、調査方法によってバラツキが出てしてしまう弱点もありました。
その弱点を補う雇用指標のひとつが「有効求人倍率」です。全国の職業安定所(ハローワーク)で受けた、求職数に対する求人数の割合を反映したもので、求職者(仕事を探している人)1人あたり何件の求人があるかを示しています。
求人倍率が1倍を上回る状況ということは、仕事を探している人の数よりも求人のほうが多いと判断できますし、1倍を下回る状況は求人不足となることから、一般的に倍率は高ければ高いほど雇用ニーズが高まっている状況。即ち好況時にあると言えます。
職業斡旋の中核となる職業安定所を介したデータを分析しているわけですから、雇用情勢に即した指標だと判断できるでしょう。もちろん、全部の求人が職業安定所を介しているわけではなく、雇用ニーズと供給側の意向がずれたミスマッチ状態も発生するわけで、いくつかの欠点もあります。
ただ、失業率は企業のダウンサイジングや設備投資の影響を受けやすく、景気の実態に比べて半年から1年位遅れて動く遅行指数ですが、有効求人倍率はほぼ景気の実態と同時に動く一致指数と呼ばれています。
米国では、失業率のほかに米雇用統計で雇用者数(非農業部門)が発表され、事業所ごとの調査に基づく実際の雇用者数が重要視される傾向にあります。米雇用統計発表時には、失業率よりも非農業部門の雇用者数の事前予想との乖離を注視してください。
次回は「貿易収支」について解説します。お楽しみに!
第79回貿易収支について
前回までは雇用関係指標「有効求人倍率」について解説しましたが、今回では「貿易収支」を紹介したいと思います。
「貿易収支」は名称通りに「貿易における収支」です。ただ、実際の発表内容には貿易黒字、貿易赤字などの言葉が並び、統計自体を理解されている方は少ないのではないでしょうか。
やはり企業業績などでも、一般的に「黒字」は良い内容とされ、対する「赤字」は悪い内容とされる傾向がありますが、貿易収支においては一概に良い悪いは判断できません。
例えば、A国で黒字となり、B国で赤字となった場合、所得はB国からA国に移ることとなりますが、為替相場では黒字だったA国が貿易で得たB国通貨をA国通貨に変換せねばならず、A国通貨の価値上昇が続くことになります。
そうなると、貿易黒字のA国製品価格は相対的に上昇。他国に比べて国際競争力を失うことになります。
例では、A国、B国としましたが、これを貿易黒字国のA国を日本、貿易赤字国のB国をアメリカとすればわかりやすいのではないでしょうか。もちろん、貿易立国の日本における貿易黒字は外貨を獲得しているため、国策通りとも言えますが、貿易黒字には良い面だけでないことを理解してください。
黒字幅や赤字幅よりも肝心なのは貿易収支の総額です。黒字や赤字に関わらず総額自体が大きくなれば、モノとカネの動きが活発化していることとなり、景況改善につながります。逆に減少していれば、モノとカネの動きが鈍っており、景況悪化を示す兆候なのではないでしょうか。
統計発表では、国際収支統計としてIMFの国際収支マニュアルに基づいて各国で作成されています。構成項目は、貿易収支、サービス収支、所得収支、経常移転収支からなる経常収支、居住者と非居住者の間で行われた資産・負債の受取を計上した資本収支があり、各項目で比較が可能となっています。
貿易収支は、実際の資本や所得移動が確認できるため、株式相場よりも為替相場に影響を与えやすい指標とも言えるでしょう。ただ、この為替相場の反応が株式相場にも影響を与えるため、注目しておきたい指標のひとつです。
次回は「機械受注統計」について解説します。お楽しみに!
第80回機械受注統計について
前回では「貿易収支」について解説しましたが、今回では「機械受注統計」を紹介したいと思います。
今回の「機械受注統計」も多くの経済指標同様、名称を見てわかるように「機械の受注状況を示したもの」です。主要機械等の製造業者を対象に各産業から1カ月間にどれだけの受注をしたかを集計したもので、内閣府経済社会総合研究所から毎月発表される経済指標です。
やはり日本の根幹産業は製造業ですし、製造業の受注環境は景気の先行きを見極めるための手掛かりとなります。統計では、海外からの受注(外需)、官公庁からの受注(官公需)、国内民間企業からの受注(民需)に分けられており、受注額が大きく、かつ不規則な動きを示す「船舶・電力」を除いた『民需』が中心指標として位置づけられています。
ただ、あくまでも設備投資のための「機械受注」ですし、先行投資の意味合いが強いことから、調査月によっては大きなばらつきが見られます。また、市場のコンセンサス予想と発表内容との乖離が大きいことでも知られており、発表直後の設備投資関連銘柄の変動も目立ちます。
かつては、ザラ場の14時発表でしたが、近年では寄り付き前発表に移行。米国市場など外部要因の影響が大きいことから、相場全体に対しては徐々に影響力が低下していますが、それでも設備投資関連銘柄の物色の手掛かりとなることから、発表内容をよく見極めましょう。
主な設備投資関連としては、ファナック<6954>、オークマ<6103>、東芝機械<6104>、安川電機<6506>、THK<6481>、SMC<6273>、住友重機械<6302>、森精機<6141>、アマダ<6113>、牧野フライス<6135>など、セクターでは機械業や電気機器の一角が該当します。
次回は「消費統計」について解説します。お楽しみに!